サラサラと清らかな光と風を受けた木の葉が心地良い子守唄となり、遊び疲れた幼子を夢の世界へ誘っていく。

『この石はどこで拾ったんだい? 気に入ったのならダルドに頼んで装飾品(アクセサリー)にでも……』

『……っ、はい……!』

『…………?』

己の呼びかけにワンテンポ遅れ、懸命に口角を上げようとするこの感じに覚えがあった。

(……寂しい気もするが仕方ないな)

直ぐに察したキュリオは手にしていた美しい石をテーブルへ置き、娘の目元を優しくなぞる。

『おいで』

『…………』

もう頷く事もままならないアオイは今にも閉じてしまいそうな瞼の隙間から一度だけキュリオの位置を確認すると、目を閉じてゆっくり腕を差し出してくる。

その両腕を自分の首へまわさせ、しっかりと小さな体を抱きかかえたキュリオは静かに立ち上がる。先に日差しが娘の眠りを妨げてしまわぬよう日除けの薄いカーテンを下ろしてからベッドへ腰掛けた。

フワリと漂っていた幼子の声は彼方へと消えて、穏やかな寝息が耳元から聞こえてくる。

(……また少し重くなったか。子供の成長は早いものだな……)

一秒ごとに美しくなっていく愛娘の姿を一瞬たりとも見逃したくはない。
しかし、この幼く愛らしい姿のまま時を止めてしまいたい衝動に駆られるのも事実だ。

キュリオは背あてのクッションを手繰り寄せると、ゆっくりその身を預けて目を閉じる。

(成長してどこかへ行ってしまうくらいなら……いっそもっと小さなアオイというのもいい……)

父の優しい心音から彼の想いが止めどなく流れ……

(おとう、さま……できるなら、わたしだって……)

アオイの想いもまた同じくしてキュリオに寄り添い、結果……無意識に働いた力が今回の事件に至ったのだと二人は気づかない。