――朝食の後、カイやアレスらとどこかへ出かけていたアオイ。
あまり遠くへは行かないという約束のもと外出を許可するが、子供たちの安全面に配慮したキュリオは密かに護衛をつけている。

そしてお昼の時間が近くなると、楽しそうな声と共に戻ったアオイは口を開くなり差し出してきたものがこれだ。

『見てくださいお父様! とってもきれいな石!』

キラキラと瞳を輝かせ、新しい発見に胸をときめかせる愛娘に目を細めたキュリオ。

『おかえりアオイ。あぁ、お前の笑顔に私は釘付けだ』

『……えっ!? え、えっと……』

美しい父親の甘い言葉が嬉しくて、それでいてちょっとくすぐったい胸の内をどう返してよいかわからないアオイはいつも口を噤んでしまう。

『ふふっお腹が空いただろう? 先に手を洗っておいで』

『……はいっ!』

よっぽど気に入ったのかアオイは宝物箱として愛用しているガラスの小物入れを部屋から持ち出すと、大事そうに抱えながら食事の席へやってきた。

『ところで私のプリンセス、食事の後のご予定は?』

先ほど拾ってきた石を気にしながら、ふわふわな卵料理を口に運ぶ娘にキュリオが笑いかける。

『……? い、いえっ……カイもアレスもおべんきょうで……』

アオイよりもいくつか年上の彼らは学業にもその身を置いて然るべきだ。
もちろん成人した者でも希望者がいればいつでも学ぶことが許されているのが城のルールで、ただ剣士が剣を、魔導師が杖を振るっていればよいわけではないのだ。

彼女も間もなくカイらと同じ道を歩むのだが、幼い頃の年齢差はやはり大きく感じるようで、たまに背伸びをしたがるのがまたいじらしい。

『そうか、アオイさえ良ければだが……私はお前と共に過ごしたい』

『……っ! わ、わたしもです!!』

あの二人が居ないからといって彼女がひとりになる事は決してない。そのために女官や侍女らが常に待機しているのだが、その貴重な時間をキュリオが見過ごすはずがなかった。

(後にまわせる執務は夜……アオイが眠ってからでいい)

こうまでするのはただアオイの為に時間を作っているわけではなく、自分の為でもあった。
キュリオは彼女の記憶の中にカイとアレスばかり棲まわせてしまうのがどうにも我慢ならないのだ。

そんなことを父親が考えているとは露知らず、満面の笑みで即答したアオイはその後キュリオの部屋で甘いひととき(?)を過ごした。