「……、っ……」

言われて気づく。この部屋からの脱出に成功したとして、他の誰かに見つかってしまったらそれこそ命が危ない。

(そ、それはっっ! ……じゃあこの部屋に他の方は入ってこないってことなのかな……)

ここに居ればとりあえず危険がないのだとわかって胸を撫で下ろしハッとする。これではただの現状維持になってしまうからだ。

(……悠久へ帰るにはこの方に連れ出していただくか、どなたかに……)

ゴロリと横になった彼の胸元が定位置となったアオイ。
眉間、顎、首から尻尾にかけて撫でられると徐々に瞼が重くなってくる。
そして何の打開策もないまま刻々と時間は過ぎて……

(眠っちゃ、だめ……お父様とダルドさまのところに……帰らなく……ちゃ…………)

「…………」

完全に閉じてしまった瞳と、ようやく力の抜けた体。
その様子をじっと見つめていた青年は苦笑交じりに安堵のため息をついた。

いつも遠目に見ていた姿とは少し違うが、子猫の本来の姿がいまもその瞼の裏に焼付いている。