(ご飯の前にここを抜け出さなきゃっ!!)


あたりをキョロキョロ見回してみるが、どの窓も扉も堅く閉ざされておりアオイの力では開けそうもない。


「おい、にゃん公」


『にゃんこう…?』


猫らしきものは自分しかいないため、疑問の色を浮かべながら男を見上げる。


「さっきはお前が飽きるまでって言ったけどな…簡単に逃がさねぇぜ?」


急に声色を下げた青年にアオイの胸はドキリと嫌な音をたてる。
そしてパチンと彼が指を鳴らすと…


―――シュルル…


どこからともなく現れた黒い羽をモチーフにした血のように赤い首輪が子猫の首に巻き付いてくる。


『な、なにこれっ…』


苦しくはないが、突然現れた首元の違和感。
子猫はしきりに前足でそれに爪をたてながら逃れようともがいている。


「…無駄だぜ。そんな簡単に外れるもんじゃねぇ」


青年は子猫の体を抱き上げると部屋の奥まで歩き、漆黒のベッドにその身を横たえた。