『…ダ、ダルドさまっ!私…アレスのところに行ってきます!!』


『アレス?』


言うが早いかキュリオの腕から飛び出した子猫のアオイ。
そのまま広間の扉を潜(くぐ)ろうと試みる。


「…彼女も束縛を嫌うか…」


柔らかな手触りを残してスルリと抜けて行く子猫の後ろ姿を見つめるキュリオはどこか寂しそうだ。


『僕も行く』


いくらアレスが賢いとはいえ、言葉が通じなければ意味がない。
猫になってしまった自分と唯一意志疎通の出来るダルドがこの城を訪れてくれたことに心から感謝したいアオイだが…


(今の私じゃお礼なんて何も出来ない…っ…)


重厚な扉をその手で開ける事も叶わず、キュリオに退席の意志を伝えたダルドが来るのを結局待つしかない。
ダルドによって扉が開かれるとアオイが先導し、アレスやガーラントが詰めている書庫へと走り出した。

が、しかし…



「…えっ!?アオイ姫様が猫に!?」



てっきり想定内だと言われるのかと思っていたが、アレスの衝撃を受けたような表情にいっきに不安が芽生えるアオイだった―――。