そしてこの話は魔導師・アレスが使者としての使命を全うし、悠久の城へ帰還する際にも聞きたがっていた話だった。
悠久にのみ生息する聖獣の中でも稀に見る…別名、神獣とまで言われている一角獣(ユニコーン)の生態系は謎が多く、"王の生まれ変わり"という言い伝えも何に由来しているのか不明なのである。


「もしそれが本当なら色々話を聞いてみたいものだ」


キュリオは好奇心に目元を緩ませるともう一度足元に目を向ける。


「…もういいのかい?」


「にゃん」


キュリオが目にした金属の皿の餌とミルクは適度に減っている。
その傍で尻尾をパタパタさせた子猫のアオイはダルドにもらったパンを口にした後、用意された餌を無理矢理飲み込みミルクで流し込んでいた。


「キュリオは食べないの?」


水を口にするばかりのキュリオ。
彼の前には手つかずの朝食が運ばれてきた時と同じ状態のままその身を置いている。


「…あの子はまだ食事をしていないだろうからね。戻ってきたら一緒に頂くとするよ」


子猫を抱き上げながらそういうキュリオにダルドは表情を曇らせる。



『アオイ姫…どうする』