「で、こんなに朝早く私に会いに来てくれたのは嬉しいが…なにか大事な用事でもあったかな?」


友人のダルドの話を無視するようなキュリオではない。
第一、この純粋な人型聖獣は私利私欲で謁見を申し出るような真似は絶対にしないため、彼の来城は誰もが快く歓迎してくれるのだ。


「アオイ姫に会いに来た。もちろんキュリオにもだけど」


「…アオイに?」


『…私に会いに…?』


まさか自分に会いに来たとは思ってもみなかった子猫のアオイはピクリと耳を動かしてダルドを仰ぎ見る。


「お礼言ってなかったから」


「…何の礼だい?」


「甘い食べもの。黒い…」


あまり言葉が堪能ではないダルド。
聞き慣れない言葉を思い出そうと頭を傾げていると、心当たりのあるアオイは彼の腕の中で飛び上がった。


『…っ!』

(チョコレートの話だわっ!!)


結局、手渡しが叶わなかったアオイは手紙を添えて城の従者へ使いを頼んだため、一度も顔を合わせていなかったのだ。
そしてそれが甘いものだと言うからにはきちんと食してくれたのだとわかる。

しかし…


『…ま、まって!ダルドさまっ!!』


アオイはダルドの口元を抑えようと必死に手を伸ばし、ピョンピョンとおかしな動きを繰り返している。




(きゃあぁあっ!お父様には言わないでぇええっっっ!!)