―――ゴロゴロ…


『や、やだっ!くすぐったい…っ…』


「…可愛いな。まるで幼い頃のアオイを愛でている気持ちになる…」


サラリと流れたキュリオの髪がアオイの目の前をかすめると…


(どうしてかしら…お父様の髪から目が離せない……)


尻尾をパタパタと揺らしながらキュリオの髪に手を伸ばす子猫。


「…ふふっ、そういえば幼いアオイに湯殿で髪を引かれた事があった…」


※本編247ページをご参照下さい。


「そういえばお前…アオイとそっくりな毛色だね」


(私とそっくりな毛色…?)


小首を傾げた子猫にキュリオは微笑んだ。


「アオイとは私の可愛いプリンセスの名前だよ」


キュリオはベッドに背を預けたまま子猫の体を頭上に掲げる。


『わっ!わわっ!!お父様っ…』


軽々と抱き上げられてしまったアオイの体。
アオイは手足をパタパタと動かしながら不安定な足場に戸惑い暴れる。


「…あぁ、すまない。怖かったかな?」


今度は起き上がったキュリオの胸元に抱かれて、大きな安心感に身を委ねる。


『大丈夫です、ちょっとびっくりしただけで…』


「にゃぁ…」


「ふふっ…いい子だね。一緒に私のプリンセスを探して食事にしよう」


腕の中で眠っていたはずのアオイを探してキュリオはベッドから離れる。すると窓の傍を歩く二人がガラスに映り…アオイはそのまさかの光景に驚き、飛び上がってしまった。

可愛らしい三角の耳にピンク色の鼻、体は全て柔らかな毛で覆われていて、両足の間から揺れるのは人間にはないはずの尻尾だったからだ。



『う、うそ…わたし……』



『…猫になっちゃったーーーっ!?』