「もうこんな時間か…」


早めにガーラントを城に返したキュリオは目の通しきれていないいくつかの書類を手に立ち上がると外に繋いでいた馬の元へと急ぐ。

途中、警護中の数人の男がキュリオの姿を目にして深く頭を下げた。


「キュリオ様、お疲れ様でございました」


「あぁ、君たちもご苦労」


長い銀髪をなびかせて馬へと跨ると、空に輝く月が夜道を照らすように輝いている。


「…アオイはもう夢の中だろうな…」

(…詳しい説明もせず突き放すような事をしてしまった…)


いつかこういう日が来るとわかっていながらも互いに納得し、合意の上での行動ではないため罪悪感が残る。

仕事を離れれば常に愛娘のことばかり考えているこの銀髪の王は、彼女との微妙な距離感に頭を悩ませていた。

ある程度役職のある者たちは娘や妻を伴った公務は珍しくない。
不規則な時間に加え…アオイを人目に晒すことを極力避けたいキュリオにとって、それが少し羨ましくもあった。