かつてのキュリオはこれほどまでに一人に対し執着、依存した事がなかった。

"王"という立場がそうさせているのもあるが…興味をそそられる者など存在しなかったからだ。

だからこそ自身を抑える事がこれほど辛い事だとは正直思ってもみなかったのだ。


「…当たり前だが私も"人"だな…」


キュリオは留まりたい気持ちをグッと堪え、アオイが目覚めぬよう静かに部屋を出て行こうとして足を止めた。


「……」


その足はおもむろに机へと向かい…羽ペンを走らせたキュリオ。
暗がりに紛れてその表情は読み取れないが、ペンを走らせるその手には若干の戸惑いが見える。

しばしの葛藤の後、ようやく書き終えた彼はそれをアオイの眠る枕元へと置くと静かに部屋を出て行った―――。