「ん…」


やんわりと温かな束縛を受けたアオイは小さく身じろぎする。


「……」

(…起こしてしまったか?)


―――スースー…


ハッとしたキュリオがアオイの顔を覗きこむように首をもたげるが、すぐさま気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。

クスリと笑ったキュリオは起床までに残されたわずかな時間を噛みしめるようにアオイの長い髪を愛おしそうに繰り返し撫でる。


(顔が見えないのは残念だな…)


腕枕をしている腕を引いて向こう側にまわってしまえば何てことはないが、それではもれなくアオイが起きてしまう。

少し残念な気持ちが拭えぬまま時間ばかりが無情に過ぎて行き…


(…そろそろ時間切れか)


美しい銀髪をかき上げながら上体を起こし始めたキュリオにベッドが軋む。すると…


「ぅ、ん…」


悩ましげな声と共に寝返りをうったアオイ。
目は閉じたままにも関わらず、ふらふらと彷徨う彼女の手がキュリオの胸元にたどり着くと…

顔を摺り寄せるように身を寄せてきたアオイ。


「…アオイ…?」


「スースー…」


声をかけてみるが反応はない。どうやら無意識に行われた行動のようだが、それが自分を探してのものだと思うと嬉しさが込み上げてくる。



「…おやすみ私のアオイ」



キュリオは少女の顔にかかった髪を指先で梳き、しっとりと甘やかな頬に口付を落とすと静かにベッドを離れた―――。