「おーい!ちょっと聞きたいんだけどさ!」


「……」


緋色の青年は堅く閉ざされた銀の柵の向こうをじっと見つめながら何もしゃべらない。

男のシュウの目から見てもわかる眉目秀麗なその青年は、腰に剣を下げながら高貴な服と緋色のマントに身を包んでいる。


(…どっかの貴族か?一体何見て……)


「なんだここ…博物館…美術館か?」


まるで月の光を受けたように輝くそれは、視界に収まりきれないほど壮大で神秘的な…悠久の王が住まうというこの国で一番神聖な城だった。


「…うん?君もこのお城に用があるの?」


茫然と城を眺めているシュウに気づいた緋色の青年はそう言葉を発しながら眉をひそめた。


「…もしかして君…」

(…この気配はヴァンパイア…)



―――カチャ…



青年は腰にある剣に手をかける。
鋭く探るような瞳がシュウに向けられ、彼の目の色を見た青年が違和感に気づいた。


(…黒い瞳のヴァンパイア…?彼は日の光を浴びても平気なのか?)


清らかな風と光が流れるこの場所で露出した肌は火傷を負うことなく、ただ彼の汗が光っているくらいだった。