アオイは小さなため息をつくと普段のお礼にと別に包んだ箱と手紙を料理台の上に置いた。


「みんな喜んでくれるといいな」


眉を下げながら呟いた少女はいくつかの箱を両手に持ちながら中庭へと急ぐ。


「よし、誰もいない」


大きなガラス戸を押して中庭に出ると朝露に濡れ、ひんやりとした空気に頭が冴えわたる。


「気持ちの良い朝…」


物心ついた頃からキュリオの腕の中で朝の散歩をしていた記憶が蘇る。


『…お前はこのピンクの薔薇の花のようだ。その柔らかな眼差しは私の心を捉えて離さない』


取り出した小さなナイフで薔薇を切り落としたキュリオはその棘を器用に削ぎ落し、腕の中のアオイへと近づけて見せる。


『この華凜な薔薇が枯れてしまわぬよう私は水を与えよう。その代わり…』


『その存在すべては私のために在り続け…お前には優しい香りと愛らしい姿で私を満たしてもらわなくてはね―――』


『……』


薔薇に向かって言っているはずのキュリオだが、なぜかこちらを見つめているキュリオの瞳に吸い込まれるように目を離せないでいるアオイ。

だが、穏やかに微笑むその眼差しが嬉しい彼女は…