"スカーレットのためか?"


"いいえ、とは言いません。でもスカーレットさんと同じ立場の方はたくさんいらっしゃると思います…っ!ご自分を偽る事が当たり前だなんて…そんなこと思って欲しくないんです"


"だが…お前のいう女神一族の男に尊厳をとした場合、女神一族の女たちから異議が出たらどうする?"


"わっ、私に発言が許されているなら…ご自分たちの良いように考えないで下さい!!…と申し上げます。この国は……悠久は……お父様の御加護のもと、皆が平等に幸せになる資格を持っているはずですから"


"……"


アオイの説明は幼稚だが、言いたいことは痛いほどわかる。

そもそも王の決定事項にたかが女神一族などが口出しを許されているわけがない。
実際アオイの言葉でキュリオが動いたとしても、それは彼の意志だからだ。


"…アオイ"


"は、はいっ"


名を呼ばれ、背筋を伸ばした彼女はいつになく大人びいて見える。城を出て、学園へと身を投じたこのわずかな時間に得難いものがあったかどうかはわからないが…


"これ以上この話はやめなさい"


"え……"


アオイは戸惑い、悲しみの表情を浮かべて言葉を詰まらせる。
キュリオが少なからず同調してくれるという期待があったに違いない。

しかしキュリオの言葉には別の意味が含まれていた。


(まさかとは思うが…マゼンタやスカーレットが余計な口を開かぬ限り、アオイの存在が明るみになることもないだろう)


女神一族内の秩序が乱された…と、最悪アオイが標的になる事を考えたキュリオだが、それこそ称号の剥奪は現実のものとなる。