ようやくブラストの謎の拘束から解放されたスカーレットは彼と並んで中庭へと戻った。


"アオイ殿はとてもお優しい方です。…このままで終わるとは到底思えません。彼女のことを想うのであれば…今少しこの場にお留まり下さい"


(このままで終わるとは思えない?どういう意味だ…?)


先程のアオイの様子からウィスタリアの事をあまり重要視していないのはわかった。むしろ彼女が強く言っていたのは…


(…俺が男だった事に対して怒っていたのか…?)


いずれにせよ、アオイとまた心の内を話すしかないと思っていたスカーレットのもとへ見慣れた年老いた男が小走りに駆け寄ってきた。


「良かった!スカーレット様!!」


「…俺はまだ帰らない。迎えは夕方のはずだぜ?」


スカーレットはその意志を示すように男に対して腕組みをしてみせた。


「そ、そうではございませんっ!!どうぞこちらへお召し替えを!!」


「…なんだ?」


なぜ今着替えを要求されるのか疑問を頂いたままスカーレットは差し出されたものを広げて驚く。


「…っ…!?」


「先程…っ!キ、キュリオ様が声明を出されましたっ!!スカーレット様はもう女性のふりをする必要はないのです!!」


「へぇ…じゃあ二の男女神とかになるわけ?」


なにかの冗談だと思い込んでいるスカーレットの反応はあまりにも皮肉が混じっていた。するとブラストが…


「…スカーレット殿、呼び方などどうでも良いではありませんかっ!!男であることをもう隠す必要はないのです!女神一族の第二位を継承されている男性のスカーレット殿なのですからっ!!」


「…お前まで何言ってるんだ?」


同じように口を揃える二者を見比べながらスカーレットは手にした緋色の正装をじっと見つめる。そしてその襟元から地を目指す艶やかな外套がなんとも男らしく美しい。


「わかった…次は仮装パーティだな?」