……………はあ………はあ…………くそっ………




体育館裏まで走ってきた。







あ……あれ?









寒いのに汗が…………









なんで、目から出てるんだろ………









あ、僕、泣いてるのか………









そっか、失恋したんだ。









なんだよ。
なんで今更泣いてるんだよ。









始めっから分かってたじゃないか、




拓実は男。


僕も男。




付き合うのはおかしいコト。









期待なんてするんじゃなかったんだろ?









甘いものが好きなんだろ………?









苦くて苦しい思いなんかしたくないんだろ…………?









ねえ、拓実、苦くて苦しい思いなんかさせないでよ。













「……………美樹?」





ふっと顔を上げるとすぐ目の前に拓実の顔。



走ってきたのか軽く顔が赤らんでいる。






「な……なんで………なんで僕のところに来てるんだ………よ………」




行くところは僕のところじゃなくて、藍沢のところだろ……








「は?何行ってんだよ、お前は」



拓実は、呆れた顔で首を傾げる。





え……?






「だって、僕が一番だとか言っときながら藍沢に………っ



もう信じらんねぇよ!!!」





思わず叫んでしまう。






くそっ。こんな時くらい涙止まれよ。







「はぁ、何を勘違いしたかは知らねぇが、目ぇ腫れるぞ?ほら」




そう言って、制服の袖でぐしぐしと僕の顔を拭う。




ハンカチを出してこないあたり拓実らしいな。





思わずふふっと笑ってしまう。






「お、おいどうしたんだよ。
泣いたり笑ったり忙しいやつだなっ」




軽く慌てる拓実。




「ううん。なんでもない」



いつもの拓実を真似して笑顔で流そうとする。






そうだ。もうこのまま気持ちも流しちゃえばいいんだ。





僕なんかと付き合うよりよっぽどいい。







藍沢にも、拓実にも。












「なんでもないじゃないだろ?
ちゃんと言ってみろ。」




でも、こんなことでは揺らがず、かがんで僕の顔をのぞき込む。




……はあ、僕にはやっぱり拓実の技は使えないな





「はぁ……言うぞ?

…あの藍沢に言った『好きだよ』はなんだったんだよ。」






できるだけ答えてくれるように下から拓実を睨みつける。








「あー、それね!

美樹、聞こえてなかったのか?」




睨み作戦も失敗。



素っ頓狂な拓実の返答。





てか、何言ってんだ………?




「いや、よく聞こえてなかった。」






「はぁ?美樹がドアの向こうにいるって分かったからちょっと声張って言ったのに」





ふてくされた顔をするなよ。


僕が知りたいんたいんだから。




「仕方ないなー。説明するよ。


あの時、『付き合ってる人がいる』っていったら、好きなのかって聞かれたからーーー」







少し拓実の言葉が止まった。






あれ?






そう思って拓実を見ると











「好きだよ。大好きだ。」










僕の大好きな笑顔があった。










今度はちゃんと触れる拓実の手。





軽く引き寄せられる体。







軽く触れる唇。










「ハッピーバレンタイン






それと

















付き合って1年、おめでとう」


















なんだよ。付き合って1年、おめでとうって。






でも、そんな拓実がいとおしくていとおしくてたまらない。












僕はやっぱり甘いものが好きだ。