でも…待ってるって言ったくせに、こんな時に掘り返してくる功の方がもっとずるい。


「ひでえかもしれないけど、聞いてよ」


自分の言おうとしている事の重要性をわかっているのか、声のトーンが数段落ちた。


「逃げようって言ってくれた時、嬉しかったんだ」


「うん」


「このままどっか行ってもいいって思ったし。さっきの夢だって結構本気」


「うん」


「…そんな馬鹿げた事だって夢じゃねえんだから、頑張ってみねえ?」


少し目を伏せて、功がわたしの手を取った。


その手の甲に、雫が落ちる。


ここからもっと遠い所に逃げようとか


全部捨てようとか

そういう事を言われるんだと思った。


子供だけれど、夢にしかならないのかもしれないけれど

頼りない言葉にして、言ってくれるんだと、思っていた。