[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。



無人駅だし、傘とか何もないし…


ポツリと設置されたベンチも錆び付いていて、座れない。


「なあ、やべーぞ」


ボロボロの時刻表を見ていた功が深刻そうに眉を寄せる。


何事かと時刻表を覗き込んで、絶句した。


「な………な、い…?」


何でこの時刻表、平日と土日祝日で別れてるんじゃなくて、曜日ごとなんだろう。


こんなの初めて見た。


「そういや、前の駅とここって相当離れてたな」


「そう…だっけ?」


窓の外ばかり見ていたから、気付かなかった。


じゃなくて…!!


「もしかして帰れないんじゃ…」


「もしかしなくても帰れねえな」


何でそんなに冷静なの!?


帰れないって……


何度時刻表を見返しても、帰りの電車は明日しかない。


あまりの衝撃に目眩がした。