こんな何もない土地にひっそり家なんか建てちゃって…


多分周りは高齢者ばかりだろうから、変に気を遣わなくていい。


お年寄りとは呼べなくて、大人と呼ぶのもまた躊躇ってしまいそうな人間のそばにいると、息が詰まる。

だからわたしにとっては舌の回らない、ゆったりとした口調のお年寄りとの会話の方がずっとラクだ。


流行りを追った話題なんかじゃなくてさ、数日前の世間話を掘り起こしたり、昔話の辻褄を合わせたり、きっと楽しいよね。


携帯は…電波が届いているのかすら怪しいけれど、そんなの無くたっていいや。

あ、でも功は耐えられないかもしれない。


「仕事ってどうすんの?」


お金は落ちてはいないから、働かないと生活が出来ない。

それは至極当然の事で、ラクばかりして暮らそうとは思っていないけれど、色々と不便だろう。こんな所だもん。


そんな状況ではまず家が建てられないじゃないか、とは言わない。

吐き出す夢は全部都合良くしちゃっていいんだよ。


「さあ?田んぼの手伝いして米もらおうぜ」


「馬鹿じゃん」


「馬鹿馬鹿って…お前な、美味しい米がありゃそれでいーだろうが」


美味しいお米、だってさ。

笑っちゃいそうになるけれど、そうだねって言いたくなった。


でもきっと、そんな生活じゃあ…

先に飽きて、文句を言い出しそうなのはあんたでしょうが。