ザクリと足音が聞こえて、伏せていた瞼を押し上げる。

一気に開けた視界は、あまりにも眩しくて、でも逸らせなかった。


「……大丈夫かよ」


両手にアイスを持った功が、わたしの顔を覗く。

心配させないように、無理やり笑って見せた。


「大丈夫。ありがとう」


どちらかというと、功の顔が目の前にある事の方が大丈夫じゃないのだけれど。

そうは言えずに、お礼だけ口にして、差し出されたアイスを受け取る。


パッケージに表記された味はチョコ。表記なんて見なくても、デザインがまんまチョコ。

参ったな。わたしチョコ苦手なのに。


嬉々としてバニラアイスのパッケージを開ける功に交換してと言っていいものか。

ジッと手元を見下ろしていると、功のため息が耳に刺さった。


「馬鹿。お前チョコ苦手だろーが。言えよ」


「あっ!」


バッと袋ごと取り上げられて、代わりに渡されたのは棒付きのバニラアイス。

ミルク風味のそれは、昔からわたしが好んで食べているアイスだ。


「…知ってるなら、最初から…」


「あ?」


「何でもない」


わたしと功は、しょっちゅう一緒に寄り道をする仲だった。

夏にはコンビニでアイス、冬は肉まんとあんまんを買って半分こして。


功は、アイスは色んなフレーバーを楽しむ派だけれど、迷った時にはいつもチョコアイスを選んでいた。


わたしが功の好き嫌いを知っているんだから。

功だって、わたしの好き嫌いくらい、把握してないはずがなかった。