「そっかー。梢は想いを伝えたいのかー。」


携帯電話の向こうで汐音ちゃんが話している。


「う、うん…………どうすれば良いと思う?」


「どうすればって…ちょうど来週はバレンタインだし、そのときにチョコと一緒に伝えればいいんじゃない?」


「……………へ?」


カレンダーを確認する。


2月14日、バレンタイン。


その日はちょうど、金曜日だった。






放課後、図書室。


消灯時間になり、辺りはもう真っ暗だ。


「岩井さん!今日もオススメの本、教えてくれない?」


上野君は、いつものように、元気にわたしに話しかけてきた。


「今日は……その……それはなし……………」


「…え?」



わたしはカバンからハート型の小さい箱をだす。


箱の中には、昨日の夜、わたしなりに頑張って作ったガトーショコラが入っている。


好きな人への気持ちを込めて作った。


生まれて初めての、本命チョコ。





「代わりに………これ………」


「え」


上野君は見るからにびっくりしていた。


「これ……俺に?」

心臓が今までにないくらいドキドキしている。


恥ずかしすぎて上野君の顔さえ見れない。

頬が熱い。


でも、ちゃんと言わないと……


ちゃんと伝えないと…!



「……そ、そう……………その、、えっと、、、ハッピーバレンタイン!!」



わたしはそう言い残すと、帰路を走って行った。



家に帰って、布団に入っても、心臓がずっとバクバクしていた。


【完】