諸々の法は影と像の如し

「どうしたのだ」

 御魂が何故か不満顔で章親に近付く。

「うん……。御魂様、この前書庫で僕が襲われたときのこと覚えてる?」

「……ああ、そんなこともあったな」

「あの毛玉、この箱に入ってたんだけど」

 うん? と御魂が、章親の手にある木箱を覗き込む。

「呪を施した跡はあるが……。ほぉ、このような木箱にのぅ」

 まじまじと、興味深そうに木箱を見る。
 木箱はそう大きなものではない。
 両手で持てるほどで、明らかにあの毛玉よりも小さいのだ。

「窮屈だったろうなぁ」

 しみじみと言う。
 はぁ? と御魂が、眉間に皺を寄せて章親を下から見上げた。

「物の怪に、大きさなど関係ない。強く見せようと思うとでかくなるし、移動しやすくするときは小さくなる。その箱の中では小さくまとまっておっただろうよ」

「そっか」

「それがどうしたのだ。ほれ、早ぅ浄化の続きをせぬか」

 やけに急かす。
 何だろう、と思いつつ、再び章親が呪を唱えると。

「わっ」

 ばき、と木箱が音を立てて、床に落ちた。
 同時に、もわん、と異質な空気が流れ出る。

「うげっ! 酒臭っ!」

 鼻を押さえて、章親が仰け反る。
 御魂が素早く、錫杖の先を木箱に叩き付けた。
 元々古い木箱は、呆気なくばらばらに砕け散る。