「守道。そういう態度は良くないよ。ご機嫌を取るわけじゃない。お互いのことを、ちゃんと知っておいたほうがいい、と言ってるんだ。主という立場に胡坐をかくような真似、僕は出来ないよ」

「胡坐をかいてるわけじゃない。でもこっちが主導権を握ってるってことは、はっきりさせるべきだ。それにはそんな甘い考えは必要ない」

 うーん、と章親は黙り込んだ。
 多分、守道の考えのほうが陰陽師としては正しいのだ。

「守道はさぁ、ちゃんとそう言うに見合った力があるじゃない。だからそれでも御魂が従うんだよ」

 そう言う章親を、守道は、あれ、と見た。
 こういうことは昔からよく言ってきたが、今までとは何となく雰囲気が違う。

「どうしたんだよ。何かあったのか」

「つくづく、自分の無力さを思い知った。場を浄化するだけの能力なんて、いざとなったら何の役にも立たない。力のない陰陽師に龍神様なんて、どう考えても不釣り合いだ」

「力がないわけじゃないんだぜ。攻撃性がないだけで、章親の力は相当なものだ」

「目に見える魔を祓うことも出来ないのは、力のない証拠だよ。御魂様は、だからこそ自分は僕に降りたって言ってくれたけど、でも程度ってものがあるでしょ。まさかこんなに情けないとは思ってなかったんだと思う」

 そう言って、章親は以前家の書庫であった出来事を話した。

「ふーん。でも、ほんとに嫌だったら、わざわざ苦労してまで駆けつけてくれないと思うけどな。章親が死んだら、御魂は天上に帰れるのだし」

 一通り話を聞いた後、守道は首を傾げながら言った。
 それに、章親も頷く。