諸々の法は影と像の如し

「……最早この女子も用無しか」

 道仙が惟道を呼ぶのは、鬼を必要とするときだ。
 以前に、『ネタ元があれではな』と落胆していた。
 この姫君には、早々に見切りをつけていた、ということだ。
 そこへほいほいやって来たのだから、始末するにはまたとない機会だ。

「利用し甲斐がないとわかったら、早々に始末するのか?」

「下手に己のことを漏らされたら困るからだろう」

 道仙が一言、惟道に声を掛ければ、惟道は躊躇いなくあの姫君に穢れを付けるのだろう。
 だがその惟道は、今ここにいる。
 すぐに始末をつけることは出来ないはずだ。

「……ていうかさ。あんた、それを今ここで言ったら、式部卿の姫君が漏らさなくても宮中に知れるわよ」

 不意に上座から声がした。
 はた、と気付けば、宮様が暇そうに扇を弄んでいる。
 すっかり存在を忘れていた。

「あわわわ。き、聞いてらっしゃったんですか」

「当たり前でしょう。迂闊にもほどがあるわね」

 狼狽える章親に冷たい視線を投げ、宮様は惟道を見た。

「式部卿の姫君は、わたくしの従姉妹よ」

 挑むように言われても、惟道は僅かに眉を上げただけだ。
 それが? とでも言いそうである。

 宮様も、これまでの惟道の態度から、この者には何を言っても暖簾に腕押しだろうとわかったらしい。
 しばし惟道を見、ふぅ、と扇を降ろした。

「ま、従姉妹といっても、お互い会ったこともないけどね」

 そう言って、また、じぃ、と惟道を見る。