諸々の法は影と像の如し

 再度う~ん、と考える。
 血の浄化は、そう難しくなかった。
 なので、上手くいけば惟道の持つ穢れ自体も浄化できるかと思ったが、それはすなわち、鬼そのものを浄化する、ということになるのかもしれない。

 だが、よく考えると、鬼の拘りは何なのだろう。
 惟道の血に呪が仕込まれているのであれば、それをなくせば惟道と鬼は切り離せるかもしれないが。

「そっか。君と鬼を切り離しても、もっと厄介かも。操るものがなくなるな」

 惟道と切り離してしまうと、鬼は野放しになるのではないか?
 とすると、変に惟道を浄化するのは危険だ。

 悩んでいると、魔﨡が、ずいっと膝を進めた。

「なら鬼を先に滅してしまおうぞ」

 わくわく、といった感じで言う魔﨡は、やけに楽しげだ。
 きらきらと目が輝いている。
 嫌な予感。

「これ小童。ここに鬼を呼び出してみよ。我が打ち砕いてくれよう」

 錫杖を肩に担いで、魔﨡がばしばしと己の前の床を叩く。
 やっぱり、と章親は頭を抱えた。

「ちょっと魔﨡。相手は人食い鬼だよ? ここには宮様もいるんだから、そんな簡単に呼び寄せるようなことしないでよ」

「何を言うか。この前はまんまと逃げられたが、次はそうはいかせぬ。あ、章親。結界でも張って、鬼を逃げられぬようしておいたほうがよいぞ」

 ここのところ部屋に籠りっぱなしで退屈していたのだろう。
 暴れ回りたくて仕方ないらしい。

「……そうじゃな。俺は元々穢れを付けに来たのだし。道仙の言う通り行動して鬼が討たれても、知ったことではない」

 惟道までが魔﨡に賛同する。
 単に元々の目的を果たそうとしているだけなのだろうが、惟道が小刀を抜いた時、ぴき、と章親の感覚に式の波長が引っかかった。