諸々の法は影と像の如し

「でも道満殿ほどの術師なら、陰陽寮に属してなくても、いくらでも声はかかりそうだけど」

「道満殿であれば、そうであろうな。でも強いが故に、寄ってくる奴は私利私欲にまみれた薄汚い貴族ばかりだ。政治に関わるのはこりごりだったのであろうよ」

「道満殿は、出世欲のない方だったの?」

「全くないわけではないだろうが。少なくとも俺の見て来た道満殿は、都の中心に返り咲きたいというお方ではなかった。播磨の暮らしに満足していたしな」

「でも道仙殿は違ったわけか……」

「奴は己に力がないだけに、人を妬むことしか出来ぬ」

 ふん、と馬鹿にしたように、惟道が言った。
 どうやら蘆屋家は、親兄弟で能力による確執があったようだ。

 ちょっとわかるかな、と、章親は己を顧みた。
 大陰陽師の孫でありながら、章親にはさしたる能力もない。

 吉平は特にそれを咎めることも落胆することもないが、陰陽寮の同僚からは、しょっちゅう馬鹿にされる。
 人によっては相当な恨みを持つだろう。

「でも僕は、仕方ないと思うな。力がないのは本当だもの」

 人を恨んだって、力が強くなるわけではない。

「奴は己の力がいかほどのものかもわかっておらぬ。だから始末が悪いのだ」

「お前は道仙を嫌っているのか。主なのだろう?」

 守道が、惟道を窺いながら言う。

「前にも言ったが、俺は道満殿に拾われ育てられた故、蘆屋家の人間は、基本的に俺の主になるだけ。道仙がこの呪を施したお蔭で、俺は奴の命令を聞かざるを得ん、という意味では、道仙が俺の主となるが」