諸々の法は影と像の如し

「その……。昔の恨みっていうのは、おじい様との術合戦に負けて、都を追われたことだよね? 道満殿は、そんなに恨みが深かったの? 子に恨みを晴らすよう頼むほど?」

「そのようなものに、いつまでも拘っているのは道仙だけだ」

 恐る恐る聞いた章親を、惟道はまたもばっさりと斬り捨てた。
 あれれ? と章親は人差し指を額に当てた。

「ん? てことは、他の人は、さほどでもないっていうの?」

「俺は良く知らん。見たわけではないからな。だが少なくとも、道満殿も兄君も、そんな昔のことなどに構っている暇はないほど播磨で忙しかった」

「そうなんだ? ……そういえば、道満殿は播磨では重宝されたって」

「それを引き継いで、兄君もご活躍されている」

「じゃあ、何で……」

 うーむ、と考えた章親は、惟道の、道仙に対する評価を思い出した。
 『道仙にはさしたる力もない』
 言っては悪いが、確かに章親もそう感じた。

「蘆屋 道満は、晩年は帰京も許されている。でも帰って来なかったのは、恨みのある都などに帰りたくないと思ったわけではなく、単に播磨のほうが暮らしやすかったからか」

 口を挟んだ守道に、惟道は頷いた。

「いくら力が強くても、都は陰陽師が幅を利かせているからな。一介の術師に、活躍の場はない。また貴族の権力争いに巻き込まれるのも煩わしいしな」

「う、う~ん、なるほどね」

 若干揶揄されたようにも思うが、正論だ。