諸々の法は影と像の如し

「あのさ。今、都では人食い鬼が暴れてる。ここに宮様がおられるのも、この前の賀茂社参拝の折りに襲われたし、そのまま帰ると内裏に何らかの影響があるかもしれないからだ。で、その人食い鬼は、君と繋がりがあるんだよね? 君は蘆屋家の人間だ。蘆屋家の人々は、昔の恨みを晴らすために、人食い鬼を世に放ったってことなの?」

 鬼がどのように召喚され、惟道とどういう関係なのか。
 陰陽師としては、そっちのほうが気になるが、とりあえずそもそもの目的を聞くことにする。

「そのようだ。もっとも蘆屋家、と一括りにされるのは、道満殿や兄君には迷惑な話であろうがな」

 珍しく惟道の答えに、馬鹿にしたような響きが加わった。
 ん、と章親は惟道を窺った。
 前も思ったが、やはり惟道は現在の主である道仙よりも、道満や道仙の兄のほうに敬意を払っているようだ。

「道満殿は、今は?」

「もう数年前に亡くなってしまった」

「そうなんだ。その、道仙殿には、兄君がおられるの?」

「兄君は元の播磨で静かにお暮しだ」

 ちら、と章親は、守道を見た。
 守道も惟道の中の、蘆屋家の人々への感情に気付いたらしく、僅かに顎を引く。

 以前に道満について訊ねたとき、惟道ははっきりと『良い人』だと言った。
 道仙の兄のことも、『兄君』というところからして、悪く思っていない。

 主である道仙のみ呼び捨てだ。
 評価も厳しい。