諸々の法は影と像の如し

 不意に、惟道は毛玉を持ち上げた。
 そのまま目の高さまで持ち上げ、至近距離でまじまじ見る。
 毛玉もぱちくりと、目の前の惟道を見た。

「これは式ではないな。お主も鬼を召喚したのか?」

 毛玉を掴んだまま、惟道が宮様に言った。
 毛玉はずっと宮様にくっついていたので、宮様の使い魔的なものだと思ったらしい。

「わたくし? いえ、その子はわたくしのじゃないわよ。ていうか章親。これ、どうしたの? お友達だって言ってたけど」

 惟道が、少し変な顔をした。
 『お友達』に違和感を覚えたのだろう。

「ああ……。そういや毛玉、どうしたんだろう。昔っからいたしなぁ。別に召喚したわけではないです。毛玉ぐらいの物の怪だったら、その辺にいるんじゃないですか?」

 毛玉は鬼だが、大した力もないし、悪さもしない。
 普通にその辺を漂う物の怪の類なのだろう。
 死肉を漁る餓鬼だって、普通に(?)墓場を彷徨っている。

「つか、てことは、やっぱりあの人食い鬼は、召喚されたものなの?」

 章親が聞くと、惟道は頷いた。

「君が召喚師なの?」

「俺にそんな力はない」

「でもあの鬼の印は、君にあるよね?」

 これにも惟道は頷く。
 聞かれたことには答えるが、あくまで聞いたことに対して否か応か答えるだけで、補足事項までは自ら答えない。

 だが隠している風でも、口止めされている風でもない。
 聞けば教えてくれるのだろう。