諸々の法は影と像の如し

「ねぇ、あなたは鬼? 人?」

 ずばんと直球で聞く。

「一応人ではあろうな」

 宮様に声を掛けられても、章親のように平伏するわけでもなく、畏まって答えるわけでもない。
 そのままの姿勢で、惟道は短く答えた。

「でも鬼の印があるのよね? あなたが鬼で、鬼の力を術で封じられているわけではないの?」

「この鬼の印は、あの人食い鬼の印だ。それを、九字紋で封じている。それ故あの鬼は、俺に手出しが出来ぬ」

 宮様と惟道のやり取りに、章親と守道は聞き入った。
 徐々に惟道と鬼の関係が明らかになる。

「へー。じゃあわたくしも九字紋を施して貰えば、鬼に襲われないってこと?」

「さぁ、それはどうだか」

 ふむふむ、と章親と守道は、聞いたことを分析する。
 なるほど、だから惟道は鬼に襲われないのか。

 だがあの鬼は、何故惟道に執着するのだろう。
 惟道の血にしか反応しないのは何故なのか。

 う~ん、と守道と二人で悩んでいると、ぱし、と扇の音が響いた。

「ちょっとそこ。何黙り込んでるのよ。わたくしにばっかり話させて」

 見ると惟道は、膝先にまで近寄っている毛玉を、じっと見ている。
 明らかなる物の怪の毛玉が膝先に寄って来ても、変わらぬ無表情。

 が、若干興味をそそられているようだ。
 毛玉も一応鬼だからだろうか。