諸々の法は影と像の如し

「もぅ魔﨡。宮様をお部屋から出しちゃ駄目じゃない」

「宮が見たいと言うんじゃ。何、あのような小童、我の敵ではない」

 悪びれもせずに、ふん、と鼻を鳴らす。
 魔﨡は惟道を見ているので、見目良い青年ではない、とわかっているはずなのに、と心の中で思いつつ、章親は守道の前に座る惟道を見た。

 見目良い青年でない、というのは、少なくとも惟道は『青年』ではないからだ。
 章親と同じか、少し下ぐらい。

 見目は確かに悪くはない。
 ただ捉えどころのない感じだ。

 全くの無表情は、まさに能面のよう。
 己と同じ歳ぐらいでこの落ち着き様は、まさに異様だ。

「いいじゃない。毛玉もずっとお部屋で退屈してたし」

 見ると、宮様の着物の裾に隠れて、毛玉が章親を見上げている。
 毛玉まで! と章親が睨むと、毛玉は、へら、と笑って宮様の後ろに隠れた。
 すっかり仲良しのようだ。

「さてさて。噂の鬼は、あなたなのね?」

 固まる章親をさっさと押しやり、宮様は部屋に入った。
 そして上座にすとんと座り、惟道を見る。

「あらら。思ったより幼いわね。悪くはないけど、女子を蕩かすほどの容姿でもなし。まぁまだ若いし、先が楽しみってやつかしら?」

 何気に失礼なことを言い、顔の前で扇を広げると、宮様は惟道に笑いかけた。
 その後ろから、毛玉が、じーっと惟道を見る。

 一目で高貴な身分とわかる女子の登場と、何故かその女子にくっついている小鬼。
 まるで物の怪憑きの姫君だ。
 普通の者ならいろんな意味で仰天する状況だというのに、惟道はやはり眉一つ動かさない。