諸々の法は影と像の如し

「穢れを付けに来たぁ?」

 部屋でちらっと話を聞くなり、守道は思い切り顔をしかめて惟道を睨んだ。
 当然の反応かもしれない。

「で、でもほら。そういうことも、ちゃんと話してくれるってことは、完全に敵ではないのかなぁ、と」

「穢れを付けに来るってことは、鬼を呼び込もうってことだぜ? 敵でないわけあるか」

 章親のフォローも、守道はばっさり斬る。
 うう、と章親が黙ったところに、さらさらさら、と軽い衣擦れの音がした。

「鬼遣いが来たのですって?」

 そう言いつつ、ひょい、と部屋に入って来たのは宮様である。
 ぎょ、と章親が腰を浮かせ、宮様を押し止める。

「ちょ、ちょっと宮様! 何お部屋から抜け出してるんです」

「だって、例の鬼の親玉がやって来たっていうから、興味があって。見目良い青年なのでしょう?」

 そんなことを言った覚えはないが、宮様の中では内裏の、宴の松原の鬼のことが頭にあり、人型の鬼というのは見目良い青年、という考えのようだ。
 乙女心が動かされるのもわかるが、宮様ともあろう者が、軽々しく客人の前に姿を現さないで欲しい。

「我がついておるのだから、何があろうと気にすることはないわ」

 宮様の後ろで、魔﨡が言う。
 魔﨡は章親の傍がいいので、宮様が章親の傍に行きたい、と言えば、それを窘めることなどしない。
 一緒に来るのがオチだ。
 現に、今も。