「あ」

 部屋の前の簀子で外を眺めていた章親が、顔を空に向けた。

「何か引っかかった。あれ、まだお屋敷までは着いてないと思うんだけどな」

 とにかく蘆屋屋敷を探ろう、となり、先程式を飛ばしたのだ。
 それが程なく、何かに反応した。

「早いな。鬼がやって来たのか?」

 守道も、ちょっと驚いている。
 空を飛んで行く式だとしても、屋敷に着くには早過ぎる。

 となると、その間に何かがある、ということになる。
 穢れの衣はあるのだし、鬼がこちらに向かっている可能性もあるのだが。

「う~ん……。そんな感じでもないなぁ……」

 邪気を感じたわけではない。
 式が、単に何かを見つけた感じだ。

「ちょっと見てくるよ」

「大丈夫かよ」

 腰を上げる章親に、守道が声を掛ける。
 鬼だったら危険だ。

「とりあえず、紺を連れて行け」

 守道が言うと、ぽん、と現れた紺が、章親の傍に立った。

「なら、我が行くが道理じゃろ」

 魔﨡がすかさず片膝を立てるが、それを章親が制した。

「駄目だよ。魔﨡は宮様をお守りして。まだ油断は出来ないんだからね」