「それはそうだけど。でも宮様を鬼の手がある部屋に招くことはできないから、できるだけ遠い部屋にしてるのに」

「そんな細かいこと気にするな」

 ひらひらと手を振り、魔﨡はどすんとその場に座った。
 魔﨡がいてくれるのは心強いのだが、はたしてこのまま宮様までこんな恐ろしい部屋に置いておいていいものか。
 だが当の宮様は、別段怖がるでもなく鬼の手をまじまじ見つめてから、くる、と振り向いた。

「やったじゃない。やっつけたの?」

「い、いえ。傷を負わせただけで、逃げられました」

 守道も、思わぬ宮様の登場に面食らったようで、ぎこちなく頭を下げる。
 顔を直視するだけでも失礼なのだ。
 三人とも、平伏したまま動けなくなる。

「ふーん。でも怪我したってことは、しばらくは大人しくしてるかしらね」

 すとんと宮様も、その場に座った。
 ぎょ、と章親が思わず顔を上げる。

「み、宮様。お部屋にお戻りください」

「あらっ。また仲間外れにしようとしてる」

「いえ、そうでなくて。このように穢れたところにいるものではありません。宮様にどのような影響があるかもわかりませぬし」

 吉平も必死で説得を試みる。
 が、宮様は、ぷーっと頬を膨らませた。

「危ないのは覚悟の上よ! だからこそ、皆で集まってたほうがいいっていうの! 私だって知らないうちにあなたたちがやられちゃったら辛いんだからね!」

 甲高い声で怒鳴られ、皆平伏したまま口を噤む。
 ここまで言われると強制的に部屋に帰すこともできない。
 ほとんど命令だ。