諸々の法は影と像の如し

---いやでも怖かった……---

 あのまま飛び掛かられていたら、どうなっていたことやら。
 あっという間に喉笛を噛み砕かれそうだ。

「守道。大丈夫?」

 よくもまぁ、あんな鬼に対して自分が囮になろうなどと考えるもんだ、と思いつつ章親が言うと、守道は、ああ、と呟くように言って、上衣を脱いだ。
 そして慎重に穢れの状態を見る。

「とりあえず、これは置いておいて……。章親、俺を浄化してくれ」

「あ、うん。ていうか、そっちの衣はいいの?」

 早くしないと、またあの鬼が出張ってきたら堪らない。
 手早く章親は呪を唱えて守道に付いた穢れを落とした。

「念のためだよ。でももっと凄いものが手に入ったが」

 守道が、言いつつ部屋の隅に寄る。
 そしてそこに落ちていたモノを覗き込むようにしゃがみ込んだ。

「何……」

 同じように守道の後ろからそれを覗き込んだ章親は、言葉を呑み込んだ。
 部屋の隅に転がっているのは、小さな手だ。

 鋭い爪の指は三本。
 ぱっと見は、枯れ枝のようだ。

「俺の攻撃で斬れたんだな」

 刃物で斬ったわけではないので、切断面はぐちゃぐちゃだ。
 思わず章親は、口を押えた。