「何? 安倍の子供が来たのか」

 惟道が章親と守道の来訪を告げると、道仙は片膝を立てた。

「ガキだけで来るとは、馬鹿な奴。さて、どうしてくれよう」

 立ち上がりそうな勢いだったのに、立てた膝を戻し、道仙は脇息に寄りかかった。
 手に持った扇を口元に当てて、にやりと笑う。

「力のほどは、どうじゃ」

 聞いてみるが、惟道は僅かに首を傾げただけだった。

「ま、お前にはそんなこと、わからぬな」

 ふふふ、と広げた扇の向こうから、冷たい目を向ける。
 そういった動作一つ一つが、上流貴族ぶっているようで滑稽だ。

 そもそも元から貴族だったことなどない。
 播磨の地でも、道満などは身の丈に合った暮らしをしていた。

「どうするか……。とりあえず、面を拝んで来るか」

 ゆっくりと立ち上がり、道仙は己の姿を見た。

「惟道。着替えを持て」

 狩衣から着替えるらしい。
 小さく頭を下げ、惟道は部屋を出て行った。