諸々の法は影と像の如し

「違いますって。その、晴明様とやり合ったっていう術師のことです」

 え、と章親は毛玉を見た。
 そういえば、この場で一番昔の出来事を知っているのは毛玉だろう。
 魔﨡も相当な年齢だろうが(失礼)、この家の人間に関することなど知らないだろうし、そう考えれば毛玉が一番情報を持っていることになる。

「そっか。毛玉はおじい様のことも知ってたしね。当時のことも知ってるわけだ」

「そういうことです」

 えへん、と毛玉が胸を張る。
 胸を張ったところで毛玉なので、あまりわからないが。

「話してみて」

 章親は、ずいっと毛玉に身を寄せた。
 興味があるらしく、宮様までもが上座から降りて毛玉の傍に来る。

「えー、時は雪の舞う霜月の頃……」

「毛玉、そこまで詳しくは、いらないから。要点だけを端的に教えて」

「え~、そうなんですか?」

 身振り手振りで語ろうとしていた毛玉が、不満そうな声を上げる。
 が、章親はあえて無視し、質問形式に切り替えた。

「その術師って、どういう人だったの? 何でそんな、大貴族にまで知られるようになったの?」

「そりゃあ、力が凄かったからですよ。案外市井の術師の中にも、侮れない者がいるってことです。あの術師はむしろ、大貴族の間で有名でした。大体陰陽寮はほとんど御堂家専属じゃないですか。となれば政敵は、市井の術師を頼るしかないわけで。で、当時晴明様を重用していた御堂家を追い落としたい九条家に担ぎ出されたってわけです」