諸々の法は影と像の如し

「その式はお主の世話係じゃろ。そのようなことをするのは当たり前ではないか」

「ん~と、そうかな。うんでも、確かに陰陽寮の人たちはそうかも。でも僕は、式でもちゃんと扱いたい。元が紙だろうが、一旦生を受けたからには、心があると思うし」

 章親の言葉に心底驚いたように、御魂は目を見開いた。
 そしてそのまま、章親の少し後ろに控える楓を見る。

 一言も喋らないし、表情も全くない。
 それでも心があると言うのだろうか。

「確かに主従関係は、はっきりさせたほうがいいって言われるけど。でも僕の式は、攻撃性はないもの」

「それはお主がそういう人間だからだ。式は作った者の心を映すしの」

 自分で言って、御魂は、なるほど、と頷いた。
 式とはその造り主の願望や欲望で作り出されるものだ。
 ちょっとした身の回りのお世話をして欲しいという可愛いものから、敵を呪い殺したいといった恐ろしいものまで、全て作り手の、そのときの心を映し出す。

 そのための式なのだ。
 なので攻撃性などとは無縁の章親の式が穏やかなのは当たり前。

「だがそれは、あくまで式の話じゃ!」

 ばん! と御魂が床を叩く。

「今まではのほほんとした式に囲まれてのほほんと暮らしてこれたのであろうがな! 我は式ではないぞ。お主が作ったものではないのだから、我には我の自我がある」

「うん。でもね、御魂様。この子にだって、自我はあると思うんですよ」

 ね、と後ろを振り返り、楓に笑いかける。
 楓はやはり無表情だが、何かのほほんとした空気が漂い、それにまた御魂はイラッとした。