諸々の法は影と像の如し

「いやいや、だっておじい様とやり合ったんだよ? 相手だって、もうおじいさんだろうし、生きてるかどうかも怪しいよ」

「それならなおさらじゃ。老いさらばえておるのなら、最後の大仕事も未練はなかろう。我が身を鬼に食わせて召喚するに、何の躊躇がある」

 う~む、と章親は首を捻った。
 そう言われるとそうかもしれない。
 だが。

「どんなに深い恨みがあっても、自分を鬼に食わせるなんてこと、ちょっと出来ることじゃないよ。人ってそこまで肝が太くないと思う」

「そうか? 案外恨みを晴らすためなら、己が命を懸ける者もおるものぞ。女子など、呪いをかけた己の身を鬼に食わせ自ら鬼になるというではないか」

 うげ、と章親が顔を引き攣らせた。

「う、で、でもさ。それって結局自分が手を下してるよね? 他のモノに頼んでないし。だからやっぱり、召喚だけのために己の身を差し出すっていうのはないと思うんだ」

 少し考え、魔﨡も、そうかもな、と呟いた。
 そのとき、宮様と遊んでいた毛玉が、上座のほうから口を挟んだ。

「章親様~。その話なら、わしも知ってますよ」

「止めてよ。そんな怖い話は、これ以上聞きたくない」

 慌てて章親が耳を塞ぐ。
 だが毛玉は、ぽんと少しだけ章親のほうに飛び、ちちち、と指を振った。