章親の部屋は、安倍家の東の対の屋である。
「御魂様だよ。仲良くね」
部屋に入りつつ、章親が声をかける。
「何じゃ、誰がおるのだ。何の気配もせぬぞ?」
章親の後ろから、御魂が部屋に入りつつ中を見る。
何の気配もないわりに、部屋の中には女児が一人、ちょこんと座っていた。
「僕のお世話をしてくれてるんだ。楓(かえで)っていうんだよ。ほら、ご挨拶して」
章親に言われ、女児はぺこんと頭を下げた。
艶やかな切り下げ髪が、さらりと女児の肩を撫でた。
「……式か」
御魂は目の前の女児をまじまじと見て言った。
少し赤みがかった髪に、深紅の瞳。
着物も紅葉重ねだ。
「楓というのは、この見てくれから取ったのか?」
「そういうわけでは。秋生まれだからかな。名前は式に選ばせてあげるんだ」
「式に選ばすだと? 式が自分でつけるのか?」
意外そうに言う御魂の前で、章親は上座に脇息を用意した。
楓が回廊を走って行き、すぐに高坏に盛った菓子を運んでくる。
「候補は何個か挙げますけどね。楓のときも、庭を見ながら、桔梗がいいかなって言ったら首を振るから、じゃ楓は? って聞いて、頷いたから楓にした」
説明しながら章親は、どうぞ、と先程用意した上座に御魂を促す。
それにまた、御魂が妙な顔をした。
「御魂様だよ。仲良くね」
部屋に入りつつ、章親が声をかける。
「何じゃ、誰がおるのだ。何の気配もせぬぞ?」
章親の後ろから、御魂が部屋に入りつつ中を見る。
何の気配もないわりに、部屋の中には女児が一人、ちょこんと座っていた。
「僕のお世話をしてくれてるんだ。楓(かえで)っていうんだよ。ほら、ご挨拶して」
章親に言われ、女児はぺこんと頭を下げた。
艶やかな切り下げ髪が、さらりと女児の肩を撫でた。
「……式か」
御魂は目の前の女児をまじまじと見て言った。
少し赤みがかった髪に、深紅の瞳。
着物も紅葉重ねだ。
「楓というのは、この見てくれから取ったのか?」
「そういうわけでは。秋生まれだからかな。名前は式に選ばせてあげるんだ」
「式に選ばすだと? 式が自分でつけるのか?」
意外そうに言う御魂の前で、章親は上座に脇息を用意した。
楓が回廊を走って行き、すぐに高坏に盛った菓子を運んでくる。
「候補は何個か挙げますけどね。楓のときも、庭を見ながら、桔梗がいいかなって言ったら首を振るから、じゃ楓は? って聞いて、頷いたから楓にした」
説明しながら章親は、どうぞ、と先程用意した上座に御魂を促す。
それにまた、御魂が妙な顔をした。


