「見たい」

 じ、と宮様が訴える目で章親を見る。

「ご無体を」

 抵抗してみるが、宮様は一歩も引かない。
 つくづく変わった皇族だ。

 喋れば喋るほど、身分の隔たりを感じさせなくなっていく。
 そしてそれを咎めるわけでもない。

「さっき、毛玉が前に見つけたって言ってたじゃない。じゃあその子に見て貰うっていう手もあるんじゃないの?」

「見つけたのは毛玉ですけど、その後で僕がちゃんと調べましたよ。一緒にいたから、状況も僕がわかってます」

 宮様と章親が言い合っていると、不意に魔﨡が錫杖を振った。

「あまりに章親が毛玉毛玉というものだから、毛玉がそわそわしておるぞ」

 ちょい、と閉まった妻戸を指す。

「お主と正式に契約したモノは、呼ばれれば来る」

「う……」

 頭を抱え、章親はちらりと守道と吉平を見た。
 物の怪を、宮様の前に出していいものか。

「う~む……。穢れはないモノではあるが……」

 吉平が渋い顔で言う。

「あいつに関しては大丈夫でしょう。しっかり章親と契約してますし、何より章親を慕ってます。章親の迷惑になるようなことはしないと思いますよ。もちろんはっきり物の怪なので、宮様のお許しがないと御前に出ることは許しませんが」

 守道が、章親に頷きながら言った。
 それに、ぱっと宮様が反応する。