「章親はちょっと特殊な力があるようで、邪気のない物の怪が、章親を慕ってくるのです」

 守道が説明する。
 安倍家同様、賀茂家も強い陰陽師の家系だ。
 その力を十分引き継いでいる守道は、章親のことも昔から理解していたようだ。

「ふーん。物の怪に好かれるってのも微妙だけど。でも怖い子に付きまとわれるっていうわけじゃないってこと? 邪気がない物の怪っているの?」

「いますよ。物の怪っても、皆が皆何か力があるわけじゃないですし。ただ姿が人ではないっていうだけというか。皆良い子なんですよ」

「何か、あなたの言い方聞いてると、全然怖い感じがないわ。物の怪って、大概が怖いモノじゃない? 骸を食らったり、骨のまま人を襲ったり」

 宮様は物語などでしか物の怪を知らない。
 宮様の限らず、世間の人間は大概がそうだ。
 世間に流布している物の怪というものは、人に害為すものなのだ。

「そ、そういうのもいるでしょうけど。幸い僕の周りには良い子が集まってましたので」

「その毛玉っていうのは? 連れてないの?」

「宮様の前に出すようなモノではありません」

 ただでさえ今日は厳戒態勢で宮様をお守りしていたのだ。
 そんなところに毛玉を連れて入り込むなど、陰陽師としてどうなんだか。
 毛玉は良い子ではあるが、陰陽師が自ら召喚して支配する御魂とは違うのだ。

 が。