諸々の法は影と像の如し

 しかもあの小鬼が章親を襲おうものなら、魔﨡は宮様など放っぽり出して、章親救出に向かったのではないだろうか。
 だが神様の言うこと故か、きっぱりはっきりとした物言いのせいか、宮様は小さく頷いた。

「とりあえず、礼を言います。内裏に帰るまで、お守りくださいますよう」

「は、ははっ」

 章親と守道が、同時に応える。
 密かに魔﨡は舌打ちしたが、幸い誰にも聞こえなかった。

「ところで。折角鬼の調伏祈願に来たというのに、実際に鬼が出てきてしまいましたね」

 森から本殿のほうに戻りながら、宮様が言う。
 物の怪に慣れている陰陽師はともかく、検非違使らはまだ怖々なのに、宮様は特に怖がっていないようだ。

「そうですね。まさか本当に、あのような鬼が出現しているとは」

 守道が、ちょっと信じられない、という風に言う。

「あら? そなた、陰陽師のくせに、巷に広がる人食い鬼の存在を信じていなかったのですか」

 意外そうに、宮様が守道を見た。
 何となく、口調も大分砕けている。

 不躾だが、ちらりと章親は、宮様を見た。
 今は歩いているので、すぐ傍だ。

 間近で見る宮様は、思っていたより幼いようだ。
 自分たちと同じ歳ぐらいだろうか。