---まぁ、どうでもいい---

 自我がない惟道には、全てがどうでもいい。
 今回の計画が成功しようが、それによって道仙が素晴らしい権力を手に入れようが、はたまた逆に失敗して捕えられようが。

 道仙に従っているのは、一応主だから。
 何かに従っているのは楽なのだ。

 言われたことを、淡々とこなせばいい。
 それによってどこかの誰かが鬼に食われようが、どうでもいい。

 惟道は軽く頭を振り、血に濡れた小石を持って、土手を上がった。
 空気は張りつめているが、森全体に結界は張っていないようだ。
 このような大きな森を覆うほどの結界、今の陰陽師には張れないだろう。

 惟道は顔を上げ、手頃な枝を付けた木に目をつけると、ひょいと地を蹴った。
 そのままするすると上に登っていく。

 高い木の上から、惟道は森を見下ろした。
 このようなところから中を見ることが出来るのは鳥ぐらいなものだろう。

---さすがに宮の周りは結界が強い---

 参道を歩く宮様の姿は確認できたが、その周りは強力な結界で覆われている。
 さらにすぐ後ろには、陰陽師が二人、ぴたりと従っているのだ。