「あれっ」

 その日も森を巡回していた章親が、一点で立ち止まった。

「また穢れが……」

 浄化しようとして、ふと手を止める。
 何故ここ数日、一点だけ強い穢れがついているのだろう。
 まるで故意に付けたようなのだ。

 章親は、ぐるりと周りを見回した。
 しばし空を見ていた章親が、はっとしたように足元の穢れを見る。

「これ、宮様の足取りを追ってるんじゃないの?」

 森の入り口から、日を追うごとに徐々に社に近付いている。
 偶然だろうか。

 毛玉が、ぴょんと肩から飛び降り、きょろきょろと辺りを探った。

「そう言われてみれば、そんな感じですねぇ」

 昨日の穢れの場所を見、これまた足元に視線を落とす。
 穢れの範囲も、ほぼ同じだ。
 毛玉は足元の新たな穢れに顔を近付けて、くんくんと鼻を動かした。

「んむむむ……。これ、もしかして血じゃないですかね」

「えええっ!!」

 すさささーっと章親が飛び退った。
 が、毛玉は気にする風もなく、穢れの辺りの地面をがさがさと掘り返すように探っている。