【短】今日だけは君のもの



「ねえ、なんで“今さら”なんて言ったの?」


降り注ぐようなキスのあと
抱きしめあったまま、たずねてみた。

梅吉は「ああー」と頭を書いて、部屋のすみを指さした。


「あれだよ」

「……時計?」

「うん。あのとき、ふっと時計が目に入ってさ。日付が変わってたから、約束は無効になったなって」


だから“今さら”?


……バッカみたい。
あたしは吹き出した。


ちょっとばかし外見がカッコよくなっても、やっぱり梅吉は梅吉のままだ。

お人好しで、不器用で
あたしが大好きな梅吉。



「あ、じゃあさ。約束の日が過ぎたってことは、主導権はもう梅吉じゃないんだよね?」


にやっと笑って見ると、
梅吉はなさけない顔になった。

さっきまでの甘い雰囲気なんか消え去って、まるで中学時代に戻ったよう。


「そうだけど……でも杏ちゃん。時々はまた、俺に主導権くれる?」

「やだよ」

「え~!」


なんだかんだ言ってやっぱり
あたしたちは、こんなノリがしっくりくるんだ。


「たまにはいいじゃーん」

「ダ~メ。一年後ね」

「ちぇっ」


梅吉は舌打ちしつつも、どこか嬉しそう。




……ホントはね

ちょっと強引な梅吉もカッコよかったけど


次はまた、一年後ね。


来年も
再来年も

その先もずーっと
一緒にいてあげるから。





【END】