【短】今日だけは君のもの


階段を駆け上る。

息が切れてる。

だけど、足は止まらない。


梅吉。

“今さら”かもしれないけど、
言わせて。

返ってくる答えがどんなものでも
言わせてほしいよ。



好きです。



再会できた今日だから、言わなきゃいけないんだ。


届かない想いを抱え続けていくなんて、もう嫌だから。



「梅――ッ」


梅吉んちのリビングの扉を開け、

目に飛び込んできた光景に
あたしは茫然とした。



「梅……吉? なんで泣いてるの?」


「えっ、杏ちゃんっ!?」


真っ赤になった鼻をこすり、梅吉はあたしから目をそらす。

ゴミ箱にはティッシュの山。

小さく丸めた背中は、昔の梅吉に戻ったみたいだ。



「み、見るなよ! 同じ女の子に2回も失恋したんだから、そりゃ俺だって泣きたくもなるよ」


「失恋? 誰に?」


梅吉は充血した目で恨めしそうにあたしを見て、言った。


「杏ちゃんの他に誰がいんだよ」