【短】今日だけは君のもの


「俺、リビングにいるから。
脱衣所つかってくれていいよ」


そう言い終わるとパタンと扉を閉めて出ていく梅吉。

脱衣所にひとりきりになったあたしは、乱れた浴衣を脱いだ。


鏡に映る、下着姿の自分。

いくら緊急事態とはいえ、梅吉の家でこんな姿になるなんて

なんだか、いっきに恥ずかしくなってしまう。



昼間着ていた洋服に着替え、あたしはリビングに移動した。


「お疲れ。コーヒー飲む?」

「あ、うん……」


梅吉はソファから立ち上がり、コーヒーをいれてくれた。

あたしはキッチンに立つ梅吉の後ろ姿を見ていた。


「杏ちゃん、砂糖は?」

「えっと2杯お願い。ミルクは」

「なしだよな?」

「うん」


梅吉はあたしにコーヒーを手渡すと、さっきと同じようにソファに座った。


ここは、やっぱあたしもソファに座った方がいいのかな。

でも3人掛けくらいのソファの、ほぼ真ん中に梅吉が座ってる。

なのに隣にあたしが座ったら、体がくっついちゃうよ。

あー、どうしたら……


「何してんの? 早く座りなよ」


気づけば下から梅吉が笑いながらあたしを見てた。

あたしは慌てて腰をおろした。

なるべく、ソファの端っこ寄りで。