【短】今日だけは君のもの


そんなあたしを見て店員さんは笑う。


「とってもお似合いですよ。これならきっと彼氏さんも喜んでくれます」


いや、だから彼氏じゃないって言ってるのに……

そんなことを思っていると、
シャッ、とカーテンが開き、店内の光景が広がった。


梅吉の顔がこっちを向いた。


「……」


え、反応なし?

上から下までまじまじと見つめる視線に、あたしは息がつまりそうになる。


そっか。
やっぱりこんな可愛い浴衣、あたしには不似合いだったんだ――…


「……すっごい可愛い」


梅吉のその言葉に、あたしを顔をポカンとさせた。


「杏ちゃん、ピンク似合うじゃん!
予想以上だったからビックリしたよ」


ビックリしたのは、こっちの方。

まさかこんな反応されるなんて思ってなかった。


「さ、行こ! 花火大会」


梅吉が当たり前のようにあたしの手を握った。


3年間も一緒にいたのに、手をつなぐのなんか初めて。


梅吉の手のひらは
あたしよりずっと、おっきくて……



こんなに体が熱いのは

きっと
夏のせいだけじゃないよ。