【短】今日だけは君のもの

『杏ちゃん。それは無理だよ。
ていうかそんなのは僕が嫌だ』


きっぱり答える梅吉を見て、
すぅっと体温が低くなるのを感じた。


『あ…そっか。そりゃそうだよね』

『ごめんね』

『バーカ、何あやまってんの?
これでやっと梅吉から解放されて、逆にスッキリだよ!』


あたしの笑い声
すっごく嘘っぽい。


あたしはいつも心と反対のことしか言わないから、知らなかった。

――勇気を出して言った言葉を拒絶されるのって、こんなにも辛いものなんだね。



ほんとは梅吉と離れたくないよ。

ずっと一緒にいてよ。


あまのじゃくなあたしは、自分にさえも素直になれなくて
やっと気持ちに気づいたときには、梅吉が遠くなっていたんだ。







「――お客様、お疲れ様です」


店員さんの声で顔をあげると、試着室の大きな鏡に、浴衣姿の自分が映っていた。


そして不覚にも、見とれてしまった。

淡いピンクの生地に散る、色とりどりのコスモス模様が華やかで……


「いかがですか?」

「可愛い」

ぽつりとつぶやいたあたしは、慌てて言葉を付け足した。

「あ、いや、あたしじゃなくて浴衣が!」